年齢とともに髪のハリやコシが失われ、「昔のようにふんわりまとまらない」「髪全体がバサついて疲れて見える」といったお悩みを抱える方は少なくありません。
どうにかして若々しい髪型や艶を取り戻そうと調べると、ネット上にはこんなアドバイスが溢れています。
洗浄力がマイルドなアミノ酸系シャンプーを使いましょう
保湿のためにアウトバストリートメントやオイルをしっかりつけましょう
これらは一見、髪をいたわる正論のように思えます。しかし、現場でお客様の髪を触っていると、この通りに一生懸命お手入れをしている方ほど「根元がペタンコに潰れ、髪が細く柔らかくなり、毛先がバサバサになっている」という皮肉な現実によく出くわします。
なぜ、優しいはずのケアが逆効果になってしまうのでしょうか。現場の視点からその仕組みを紐解いていきます。
優しいシャンプーが「頭皮のエイジング」を早めてしまう paradox
アミノ酸系やベタイン系と呼ばれる界面活性剤は、マイルドで皮脂を取りすぎないのが特徴です。ただ、それは見方を変えれば「皮脂や付着した汚れを落とす力が弱い」ということでもあります。
頭皮は全身の中でも非常に皮脂分泌が盛んな場所です。日々の皮脂が適度に洗い流されないと、頭皮に残った油分が酸化して過酸化脂質という刺激物質へと変化します。
これが毛穴周りにこびりつき、慢性的な頭皮の炎症や血行不良を引き起こします。その結果、新しく生えてくる髪に十分な栄養が届かず、髪が徐々にコシを失って細く柔らかい「軟毛」になってしまうのです。
特に注意したいのが、白髪染めを定期的にされている方です。カラー剤にはアルカリ成分や過酸化水素などの薬品が含まれており、施術後の頭皮や髪には微量ながら残留しやすい性質があります。マイルドすぎるシャンプーではこの有害な残留薬品を十分に洗い流すことができず、頭皮環境の悪化や抜け毛、さらなる細毛化を後押ししてしまうケースが後を絶ちません。
オイルやトリートメントの重ね塗りが生む「オイル毛」の重み
髪がパサつくからといって、リッチなトリートメントやヘアミルク、仕上げのオイルを毎日たっぷり重ねるのもボリュームダウンの大きな要因です。
市販のトリートメントやアウトバス製品に含まれる油分やシリコンは、髪の表面を滑らかに見せる膜を作ります。しかし、前述の「優しいシャンプー」の洗浄力では、前日に付着したコーティング膜をすっきり落としきることができません。
落としきれなかった油膜の上に、翌日また新しいトリートメントを重ねる。これを繰り返すことで、髪の表面に皮膜がどんどん分厚く蓄積していく「ビルドアップ(皮膜毛・オイル毛)」が起こります。
皮膜をまとって重くなった髪は自重で根元からペタンと倒れ、夕方になると皮脂と混ざって束感のあるベタつきに変わります。外側は油分で覆われているのに、内側には水分が入らなくなるため、「触るとベタつくのに毛先は硬くバサバサ」という悪循環に陥ってしまうのです。
強い洗浄力も、弱すぎる洗浄力も、どちらも正解ではない
シャンプー選びにおいて「高級アルコール系は強すぎるから悪、アミノ酸系は優しいから善」といった極端な二元論が広まっています。
確かに、脱脂力が強すぎるシャンプーは頭皮の乾燥や毛先のパサつきを招きます。しかしだからといって、皮膜や酸化皮脂、カラーの残留物を落とせないほどマイルドなものを選んでしまっては、本末転倒です。
若々しくふんわりとした髪型を保つために本当に必要なのは、「髪や頭皮に余計な刺激を与えず、不要な汚れ・皮膜・残留物だけをリセットできる適正な洗浄力」です。
艶とボリュームを取り戻す近道は「引き算」
若見えヘアを作るために大切なのは、傷んだ髪に何かを足すことではなく、まず余計なものを削ぎ落とす「引き算」の考え方です。
まずは頭皮と髪をすっぴんに戻す
髪と毛穴に蓄積した古い皮膜や油分、酸化皮脂を、適度な洗浄力を持つシャンプーで一度すっきりと洗い落とします。余計な重みがなくなるだけで、髪本来の軽やかさが戻り、ブローしたときに根元が自然にふわっと立ち上がるようになります。トリートメントは毛先のパサつく部分だけ
トリートメントは頭皮や根元付近には決してつけず、ダメージの気になる毛先だけに馴染ませます。根元を清潔で素直な状態に保つことが、ふんわり感を一日中キープする秘訣です。素肌と同じように、土台が整ってから保湿やケアを行う
メイク汚れが残った肌にいくら高級な美容液を塗っても浸透しないのと同じで、酸化皮脂や皮膜で覆われた頭皮にスカルプケアを行っても効果は半減します。しっかりクレンジングされた清潔な頭皮になってこそ、頭皮マッサージや栄養補給が生きてきます。
髪が若々しく見える最大のポイントは、ベッタリとした人工的なツヤではなく、一本一本が風になびくような軽さと、毛根から立ち上がるふんわりとしたハリです。
もし今、「ケアを頑張っているのに髪がペタンコになる」「白髪染めを始めてから髪が痩せてきた」と感じているなら、一度油分で覆うケアをストップし、素髪に戻すシンプルなお手入れを試してみてください。
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監修・執筆:森下 秀彦(毛髪科学の専門家)
薬剤メーカーでの研究開発とサロンで第一線の美容師としての経験を経て、ヘアケア理論とケミカル技術の両面に精通した毛髪のスペシャリスト。プロ向けの技術セミナーや美容専門誌のケミカル特集記事などの活動や、群馬大学元教授との共同研究や特許技術の開発など、科学的根拠に基づく革新的なダメージレスプロセスを提唱し続けている。
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